70億人のフォロワーの皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんわ。
金曜 岩本康平の ~ イワモトサロン ~ でっす!
毎週 金曜、岩本康平の心に突き刺さった モノ、コト、ヒト、ウタ などなどをお届けするジャングルジム的実験サロン。
時に美容師として、時に一人の男として、想いを紡ぐ プレイグラウンドとなっております。
さて、
先日、お買い物に行った時のことなのですが。
骨董通り沿いにある大好きなお洋服屋さんで僕はシャツを試着していて、その生地の色味をはっきりと確認できずにいました。
というのも、やや薄暗がりの店内なので、店員さんの言う 白は白でも若干淡いグレー掛かったような色、をよく確認できなかったのです。
「 天気がいいので、よかったら表で見てみますか?」とカシミアみたいな笑顔の店員さんは機転を利かせてくれて、2人で店の表へ出てみました。
ここで、美容師あるあるなのですが、
美容師のトップスは、シャンプーやカラーリングで汚れがちなので、割と黒か白のモノが多くなりがちです。
黒のモノはご想像通り汚れが目立たないとして、白はというと、どんなにカラーやマニキュアで汚れたとしても がつんと漂白してしまえば純白に生まれ変わるわけですね。
骨董通りの眩しい太陽に照らされて ついに露わになった その張りのある生地は、燻んだ白がとても綺麗な色味でした。
しかし、「 これシミ抜きしたら失敗するやつだ。」と 僕は脊髄反射的に察知していたのでした。
そこで店員さんに「 これって、漂白すると この綺麗な色は全部抜けちゃいますよね。」と尋ねると、店員さんは「 うーん、そうですね。」と困った表情を浮かべていました。
僕も困っていました。
カタチも好み、 色も好み、 価格も想定内。
ただ一つ、
汚れたら 終わり。
一通りポージングをしながら悩んでいますと「 そんなに汚れますかねえ?」と店員さんは不思議そうに尋ねてきました。
彼氏の瞳には、僕が激しい汚れを想定しているように映っていのでしょう。
なんとなく、そんな気持ちを察知して、
「 ぼく美容師なんですよ。」と答えると、「あぁ!」と 納得の表情をされていました。
そうして、引き続きポージングをしながら悩んでいる僕に店員さんは こう言ったのです。
「 カラーとかの汚れ、そのままでもいいんじゃないですか?」
「 え?」
「 そのままでも 僕、かっこいいと思いますけど。」
それはそれは柔らかな笑顔付きで言われたものですから、そのまま購入しました。
汚れてしまっても着ればいい、気になるようなら漂白していっそ純白を楽しめばいい、そんな気持ちでありました。
ただ、この 【 かっこいい 】という価値観。
見る人によって こうも捉え方が違うのだなと感じずにはいられません。
大工の 分厚い革を鞣したような 掌が物語るように
絵描きの 赤や青に染まった爪先が その芯まで染まっているように
我が師の 腫れた左手が積年の質量を想わせるように
僕はあのお洒落で柔らかな店員さんから、自分の職業をリスペクトしてもらっているのだなと 感激していました。
少しだけ肌寒い骨董通りの帰り道で 僕は紙袋の中を覗き込んでみた。
丁寧に畳まれたシャツと一緒に、カシミアみたいな笑顔が見えた気がした。